そこにいたのはさっき陰口を叩いていたメイドたちで、アランに優しくたしなめられている。


「リリア、大丈夫?」


メイドたちから離れると、すぐに俺の心配をしてくれる。


これならリリアが本気で惚れても仕方がなかった。


「あぁ……ありがとう」


俺はもちろんこいつと結婚する気なんて微塵もない。


けれど、こいつらの結婚を破たんしてしてしまっていいものかどうか、気持ちが揺らぎ始めていた。


リリアにとってもアランとの結婚は素晴らしいものになるだろう。


そういう未来が見えてきてしまったのだ。


「たまには声を出したらどうだよ」


部屋へと続く長い長い廊下を歩きながら、俺はそう言った。


「声を?」


「そうだよ。剣の練習にしても、大食いにしても、いつでもクールに決めてんじゃねぇよ」


「それはどういうことだ?」