男は白髪の髪の毛に、長いヒゲをはやしている。


そのヒゲは邪魔にならないように一つにくくられていた。


背が高くてガッシリとした体系で目の前に立つと妙な威圧感がある。


「な、なんか用かよおっさん」


完全に男を見上げる形だった。


男は体をくの字にかがめてマジマジと俺の顔を見ている。


口から酒臭い息が出てきて顔をしかめた。


「用事がないなら、俺もう行かないと」


そう言って男の横を通り過ぎようとしたときだった。


途端に男が「ここにいるぞ!!」と、叫んだのだ。


なんのことかと思い、動くことができなかった。


男の言葉を合図に路地から複数の男たちがかけよてくる。


周囲は砂ほこりに包まれて激しくむせた。


「へへっ。こんなところで1人でいるなんて、末娘はバカだな」


男が俺の右腕を掴んで言う。


「なにすんだよ!」


逃れようとして必死に身をよじるが、どうやら男は馬鹿力らしい。


片手で俺の体を持ち上げ、中ぶらりんになってしまったのだ。