「じゃ、ちょっとそこどいてくれる?」


「なにをおっしゃっているのですか。今すぐ屋敷にお戻りください」


やっぱりそうか。


出してくれないなら、強行突破するしかねぇじゃん?


俺はキョロキョロと庭を見回した。


四方は高い壁で覆われていて、女の力でよじ登れるとは思えない。


後方からは屋敷の人間が追いかけてきている。


足元を確認すると小さな小枝が風に吹かれてからまり、ボールのように丸くなっていた。


俺は兵士たちを見てニカッと笑う。


「そうだな。今日は外へ出るのはやめておこうかな」


聞きわけがいいフリをして兵士に背を向ける。


そして数歩歩いたところで勢いよく振り返り、枝ボールを思いっきり蹴りあげた。


ボールは1人の兵士の顔面にぶつかり、その拍子に枝がはじけてバラバラになった。


「よっしゃ!」


思わずガッツポーズをしてもう1人の兵士へ向けて体当たりをかます。


兵士は驚き、俺を……リリアを傷つけないようにとっさに剣を落とした。


俺はその勢いで門まで走り、木製の扉を大きく開いた。


脱出成功!