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「それにしても、亮太は着替える時はトロイよなぁ」


サッカーボールを蹴りながら歩いていると、友人がそう言ってきた。


「毎回着替えに最後までかかってるもんな。子供かよっつーの」


俺は友人の言葉に同意する。


今日も亮太の着替えは遅くて、俺たちが更衣室を出る時にはまだ、それほどかいていない汗を拭いていた。


あれだけトロイのに、どうしてサッカーのことになると俊敏な動きができるのか。


今でも疑問だし、思い出すと腹が立った。


そのムカムカを消し去るために俺はサッカーボールを高く蹴りあげた。


随分前を歩いていたキーパーの背中に見事命中し、「なにすんだよ!」と、文句を言っている。


「悪りぃ悪りぃ! つい思いっきり蹴っちまった!」


両手を合わせて平謝り。


キーパーはすぐにボールを蹴り返してきた。


しかしボールはまっすぐには飛ばず、軌道がそれる。


「おい、なにすんだよ!」


文句を言いながら走り、ボールに追いついたと思った時だった。