でも、亮太がいる限りそれは無理だと、内心焦っていたのだ。


だから確実に亮太よりも勝っているものがあるんだと、自分自身に見せたいのだ。


「お前のその負けん気って、やっぱりお兄さんのせい?」


その質問に眉をピクリとあげた。


俺の兄貴は3つ年上で、なんでもできる人だ。


勉強でもスポーツでも難なくこなしてしまう。


両親は当然のように兄貴に大きな期待をかけていて、それを見ていた俺は兄貴を追い抜こうと必死になっていた。


それがいつの間にか亮太という存在にとって代わっていたのだ。


「別に、そんなんじゃねぇよ。もう帰るぞ」


俺は友人からの返事をはぐらかして、更衣室を出たのだった。