今日という日の終わりを告げるかのように、西に傾き始めた太陽は、その身を赤く燃やしながら地平線へと沈んでいく。見上げたジャングルジムの遥か頭上では、気の早い星たちが小さな光を灯していた。
 赤にも、黒にもなれない空の色を眺めながら、俺は自分の気持ちも同じように中途半端なまま、もう戻すことができないような気がしていた。

 教えてほしかった。
 
 知りたかった。
 
 真那にとって、自分はどんな存在だったのかを。
 
 そして伝えたかった。
 
 自分がどれほど彼女のことが好きで、その気持ちを声にして届けたかったかということを。
 
 何百回と真那と一緒に見てきた街の景色には、消えていきそうな彼女との思い出を繋ぎとめるかのように、一つ、またひとつと窓の明かりが灯り始める。
 俺はポケットからそっとオルゴールを取り出す。簡単に蓋が開いてしまうオルゴールは、まるで命を失ってしまった抜け殻のように軽く感じた。ほのかに金色に輝いていた真那からのプレゼントは、弱々しくなっていく西陽とともに、その鮮やかさを失っていく。
 そしてオルゴールが夜の色に包み込まれると、辺りにはロウソクの火を消したようにふっと静けさだけが残った。