真那と初めて再会してから迎える四度目の日曜日は、正直気が気ではなかった。
 まずそもそも、オルゴールが無事に鳴るのかということ。そして前回のような失敗を繰り返さない為に環境の安全性を考慮し、さらには真那の手帳に書いてあったことを実現する為に今回は自分の部屋を選んだこと。
 これらの理由がシャッフルされて、俺の心はまったく穏やかではなかった。ちなみに、自分の部屋に女子を呼ぶのは初めてだ。
 普段の風景とは随分違うすっきりと片付いた部屋の中で、俺は最終チェックを行っていた。いくらオルゴールが鳴っている間は物を動かせないとはいえ、おかしなものが見えていたら困る。三百六十度ぐるりと入念な確認を行った俺は、部屋の真ん中にあるローテーブルの横に置いた座布団の上に腰を下ろす。そして目の前には、テーブルを挟んでもう一枚の座布団。何だか、変な儀式を始めるみたいだ。
 ごほん、とわざとらしく咳払いをすると、俺はテーブルの上にオルゴールを置いた。見た目は特にあれから変わった様子はない。あとは、ちゃんと開くかどうかだ。
 いつもより早いテンポで刻む鼓動を耳の奥で聞きながら、ゆっくりとオルゴールへと手を伸ばす。そして指先で小さなフックに触れた。
 
 ゴクリ。
 
 飲み込んだ唾を合図に、俺はそっと指先に力を入れた。すると自分の指の動きに合わせて、オルゴールを密閉していたフックがするりとスライドする。その瞬間、パチンという音と共に勢いよく蓋が開いた。

「うおッ」
 
 ちゃんと蓋が開いたことに驚いた俺は思わず目を瞑ってしまった。そして真っ暗になった世界で祈るような思いで今度は耳を澄ませると、あのメロディが確かに聞こえてきた。どうやら、壊れてはないみたいだ。
 良かった、と盛大に安堵の息を吐き出した俺はおそるおそる瞼を上げていく。するとぼんやりと広がっていく視界には、さっきとは変わらない部屋と、誰も座っていない座布団の姿。
 
 え?
 
 その光景に、再び胸の奥で不安がざわりと動いた。

 まさか、真那は……

 そんな恐怖が頭をよぎり、慌てて立ち上がろうとした時だった。突然「わッ!」という声と共に両肩がずしりと重くなる。