昼過ぎになると、今日の大方の作業は終わりを迎えたようで、他の班のクラスメイトたちが片付けをし始めていた。
俺たちも一通り色を塗り終わり、乾いた画用紙から順に集めて片付けを始めていく。一人だけ大量にノルマがあった真一だったが、結局早く作業の終わった自分や班の女子たちが手伝って予定通り終わることができた。
「おい真一! そろそろ部室行かないとやばいぞ」
床にずらりと並べられた画用紙を拾い上げていると、教室の後方から突然和輝の声が聞こえてきた。その声に、女子たちと楽しそうに話していた真一が、はっと顔を上げて黒板の上の時計を見る。
「うわっ、マジでやばいじゃん!」
目の前であれだけ楽しそうな表情を浮かべていた真一の顔から、みるみるうちに笑顔が消えた。そして突然頭のスイッチを切り替えたように、真一は真剣な表情をして職人ざながらの動きで自分が色を塗った画用紙をかき集めていく。
「よっし! とりあえず俺の分は集めたから、あとは頼んだ!」
真一はそう言うと、集めた画用紙を何故か俺の前にどさっと置き、エナメルバッグを肩にかけて和輝が待っている教室の扉へと走っていく。本当に慌ただしい奴だ。
「西田くんって面白いよね」という班の女子たちの彼への優しい評価を片耳で聞きながら、俺は真一が置いていった画用紙を拾い上げる。よくよく見ると、真剣な表情をしていた割に塗り方が結構雑だった。
そんなことを思いながら足元に残っている画用紙を拾い上げていると、今度は背中越しに明日香の声が聞こえてきた。
「椿、一人でそんなに運べる? 大丈夫?」
その声にチラリと椿の方を見ると、彼女の目の前には様々な大きさの段ボール箱が積み上げられていた。
「うん。何回かに分けて運ぶから大丈夫。それに明日から使う家庭科室の準備もしときたいし」
そう言って椿はふんと気合いを入れるように明日香に向かって力こぶを作る。それを見て、「全然力こぶないじゃん!」と明日香はぷっと吹き出して笑った。
そんな彼女たちのやり取りを見ていた俺は、画用紙を全部拾い切るとそれを班の女子に託して、そのままゆっくりと椿の方へと近づいていく。
「それ、家庭科室に運ぶのか?」
俺が近づいてくることに気付いていなかったのか、声をかけるとビクっと椿が肩を震わせた。そして目をパチクリとさせながら俺の顔を見る。
「あ、うん……そうだけど」
「なら俺も運ぶの手伝うぞ」
俺の言葉に椿が何か言いたげな顔をしていたが、俺はそれを遮るようにそそくさと手前にあったダンボール箱を持ち上げた。
たぶん椿のことだから、俺に手伝ってもらうのを遠慮しようとでも思ったのだろう。けれどこちらは両手にダンボールを抱えて準備万端なので、椿は諦めるように小さく息を吐き出した後、少し恥ずかしそうに「ありがと……」と呟いた。その隣で「良かったじゃん」とニヤリと笑う明日香の顔がどことなく真一がニヤニヤしている時のような感じがして、俺も椿も彼女から目を逸らす。
「とりあえず先にこれだけ運ぶか」
椿もダンボール箱を持ったのを確認した俺はそんな言葉を口にすると教室の扉へと向かって歩き出した。すると慌てた足音と共に「置いてかないでよ」と椿の声が背中越しに届く。
俺たちも一通り色を塗り終わり、乾いた画用紙から順に集めて片付けを始めていく。一人だけ大量にノルマがあった真一だったが、結局早く作業の終わった自分や班の女子たちが手伝って予定通り終わることができた。
「おい真一! そろそろ部室行かないとやばいぞ」
床にずらりと並べられた画用紙を拾い上げていると、教室の後方から突然和輝の声が聞こえてきた。その声に、女子たちと楽しそうに話していた真一が、はっと顔を上げて黒板の上の時計を見る。
「うわっ、マジでやばいじゃん!」
目の前であれだけ楽しそうな表情を浮かべていた真一の顔から、みるみるうちに笑顔が消えた。そして突然頭のスイッチを切り替えたように、真一は真剣な表情をして職人ざながらの動きで自分が色を塗った画用紙をかき集めていく。
「よっし! とりあえず俺の分は集めたから、あとは頼んだ!」
真一はそう言うと、集めた画用紙を何故か俺の前にどさっと置き、エナメルバッグを肩にかけて和輝が待っている教室の扉へと走っていく。本当に慌ただしい奴だ。
「西田くんって面白いよね」という班の女子たちの彼への優しい評価を片耳で聞きながら、俺は真一が置いていった画用紙を拾い上げる。よくよく見ると、真剣な表情をしていた割に塗り方が結構雑だった。
そんなことを思いながら足元に残っている画用紙を拾い上げていると、今度は背中越しに明日香の声が聞こえてきた。
「椿、一人でそんなに運べる? 大丈夫?」
その声にチラリと椿の方を見ると、彼女の目の前には様々な大きさの段ボール箱が積み上げられていた。
「うん。何回かに分けて運ぶから大丈夫。それに明日から使う家庭科室の準備もしときたいし」
そう言って椿はふんと気合いを入れるように明日香に向かって力こぶを作る。それを見て、「全然力こぶないじゃん!」と明日香はぷっと吹き出して笑った。
そんな彼女たちのやり取りを見ていた俺は、画用紙を全部拾い切るとそれを班の女子に託して、そのままゆっくりと椿の方へと近づいていく。
「それ、家庭科室に運ぶのか?」
俺が近づいてくることに気付いていなかったのか、声をかけるとビクっと椿が肩を震わせた。そして目をパチクリとさせながら俺の顔を見る。
「あ、うん……そうだけど」
「なら俺も運ぶの手伝うぞ」
俺の言葉に椿が何か言いたげな顔をしていたが、俺はそれを遮るようにそそくさと手前にあったダンボール箱を持ち上げた。
たぶん椿のことだから、俺に手伝ってもらうのを遠慮しようとでも思ったのだろう。けれどこちらは両手にダンボールを抱えて準備万端なので、椿は諦めるように小さく息を吐き出した後、少し恥ずかしそうに「ありがと……」と呟いた。その隣で「良かったじゃん」とニヤリと笑う明日香の顔がどことなく真一がニヤニヤしている時のような感じがして、俺も椿も彼女から目を逸らす。
「とりあえず先にこれだけ運ぶか」
椿もダンボール箱を持ったのを確認した俺はそんな言葉を口にすると教室の扉へと向かって歩き出した。すると慌てた足音と共に「置いてかないでよ」と椿の声が背中越しに届く。