そんな椿の姿を見たせいか、何だか自分まで恥ずかしくなってしまい、俺はそれを誤魔化すように頭をかくと何食わぬ顔を装って部屋の中へと足を踏み入れた。

「ごめん、ちょっと散らかってるけど……」
 
 部屋の中に入るなり、椿は恥ずかしそうにしたままそんなことを呟いた。が、俺の視界に映ったのは綺麗に整えられた、いかにも『女子の部屋』とわかるような空間だった。
 真那の部屋と同じくらいの広さの部屋には、白い木目調のローテーブルとチェスト、それに合わせて白いフレームのベッド。
 床に敷かれた楕円形のラグと窓のカーテンは薄いピンク色をしていて、部屋のアクセントカラーのようになっていた。
 さすがデザイナー志望ということだけあり、チェストの上や勉強机などにはところどころ雑貨が飾られていて、誰が見てもオシャレな部屋だと一目でわかる。ちなみに、ベッドの上には大きな象のぬいぐるみが置かれていた。

「そこ座っていいよ」

「お、おう……」
 
 俺は椿が指さしたローテーブルの横に転がっている薄いクッションにおずおずと腰を下ろした。ハッキリ言って、かなり落ち着かない。

「なんか……真那の部屋と全然違うな」
 
 壁に飾られた海外の街の写真を見つめながら俺はぼそりと呟いた。整然としていた真那の部屋と違って、この部屋にはどこを見ても椿のセンスが光っている。

「お姉ちゃん、部屋の中にはできるだけ物を置きたくないっていつも言ってたから。代わりに歩の家のガレージに色々あるからって」

「あいつ……」
 
 真那らしい発言に、俺は思わず肩を落とした。どうやら彼女にとってうちのガレージは物置も兼ねていたようだ。