そんなことを思っていたら、真那の声が再び耳に届く。
「んー、せっかくガレージにやってこれたのにこれじゃあ何も作れないなぁ」
残念そうにそんなことを呟きながら、真那は足元にあった工具をコンコンと叩いた。
「さすがの真那も10分だけだと何も作れないか」
「まあそれもあるけど……、オルゴールが鳴ってる間は何も動かせないからね」
「何も動かせない?」
真那の口から唐突に出てきた言葉に、俺はきゅっと眉根を寄せる。するとそんな自分に向かって、「そっ」と彼女がコクリと頷く。
「このオルゴールが時間を止めている間は、この世界にあるものに触れることは出来ても動かせないようになってるの。だから勝手に持ち運んだり、場所を変えたりできないってこと」
「そうなのか?」
俺は半信半疑で返事をすると、試しに足元に落ちている小石を拾い上げようと右手を伸ばした。が、小石はまるで地面に張り付いたように重く、どれだけ力を込めてもビクとも動かない。
「ほんとだ、まったく動かない……」
今度は右足で小石を蹴り付けながら俺は驚いた口調で言う。時間が止まってしまうことや、真那が現れることに驚いて気付かなかったが、どうやらこのオルゴールの力にはもう一つルールがあったみたいだ。
「だから歩がこのオルゴールを使って変なことをしようと思っても何もできないってこと」
「変なことってなんだよ……」
呆れた俺が目を細めて睨むと、「さぁ、何でしょう?」と真那はニヤニヤと笑いながらはぐらかす。生きていた頃とまったく変わらないそのイタズラっぽい笑みに、思わず俺もふっと口元を緩ませる。
「つまり時間が止まっている間は、この世界を変えることはできないってこと」
「なるほどな……」
俺はそう呟くとコクリと頷いた。たしかにいくら10分間とはいえ、それだけの時間があれば、時間を止めている間にあれやこれやと色々と出来てしまうだろう。
無茶な発明ばかりしていたとはいえ、真那は人の役に立ちたいという信念を持って自分の夢と向き合っていた。だから、自分の発明が故意に悪用されるなんてことは、心底望まないはずた。まあ俺も彼女が作った発明を、そんな風には使いたくはない。ただ……
懐かしそうにガレージの中を眺めている彼女の横顔を見つめながら、俺は小さく息を吐き出す。
「でもせっかく戻ってこれたのに、好きなことができないって残念だな……」
俺はそんな言葉を呟きながら、真那と同じようにガレージの中を見渡す。けれど次に耳に届いたのは、自分の予想に反して、彼女らしいいつもの明るい声だった。
「まあこればっかりは仕方ないよ。歩のおかげでこうやって好きな場所に戻ってこれただけでも奇跡なんだし」
「……」
あっけらかんとした真那の声に、思わず俺の方が押し黙ってしまう。自分がもし真那と同じような立場だったら、果たして今の彼女のように素直に自分の現状を受け入れることが出来ただろうか……。いや、きっと無理だろう。俺にしても椿にしても、真那のこういう明るい性格に随分と救われてきたのだから。
そんなことを黙ったまま考えていると、真那が続け様に声を発した。
「それにほら、私って天才だからいくら命があったとしてもアイデアが尽きることないでしょ?」
「そういうことをサラッと言える真那の精神が凄いよ」
尊敬が度を越えて逆に呆れ返ってしまった俺の言葉を、真那は素直に褒められたとでも思ってしまったようで、「でしょ!」と嬉しそうな声を発する。そしてこちらを振り返ってニコリと笑った。
「でも歩はやりたいことがあるなら、やり残したらダメだからね」
「……」
屈託のない笑顔でそんな無茶な言葉を告げてくる真那。俺はそんな彼女の姿を見て、思わず目を逸らしてしまう。
「んー、せっかくガレージにやってこれたのにこれじゃあ何も作れないなぁ」
残念そうにそんなことを呟きながら、真那は足元にあった工具をコンコンと叩いた。
「さすがの真那も10分だけだと何も作れないか」
「まあそれもあるけど……、オルゴールが鳴ってる間は何も動かせないからね」
「何も動かせない?」
真那の口から唐突に出てきた言葉に、俺はきゅっと眉根を寄せる。するとそんな自分に向かって、「そっ」と彼女がコクリと頷く。
「このオルゴールが時間を止めている間は、この世界にあるものに触れることは出来ても動かせないようになってるの。だから勝手に持ち運んだり、場所を変えたりできないってこと」
「そうなのか?」
俺は半信半疑で返事をすると、試しに足元に落ちている小石を拾い上げようと右手を伸ばした。が、小石はまるで地面に張り付いたように重く、どれだけ力を込めてもビクとも動かない。
「ほんとだ、まったく動かない……」
今度は右足で小石を蹴り付けながら俺は驚いた口調で言う。時間が止まってしまうことや、真那が現れることに驚いて気付かなかったが、どうやらこのオルゴールの力にはもう一つルールがあったみたいだ。
「だから歩がこのオルゴールを使って変なことをしようと思っても何もできないってこと」
「変なことってなんだよ……」
呆れた俺が目を細めて睨むと、「さぁ、何でしょう?」と真那はニヤニヤと笑いながらはぐらかす。生きていた頃とまったく変わらないそのイタズラっぽい笑みに、思わず俺もふっと口元を緩ませる。
「つまり時間が止まっている間は、この世界を変えることはできないってこと」
「なるほどな……」
俺はそう呟くとコクリと頷いた。たしかにいくら10分間とはいえ、それだけの時間があれば、時間を止めている間にあれやこれやと色々と出来てしまうだろう。
無茶な発明ばかりしていたとはいえ、真那は人の役に立ちたいという信念を持って自分の夢と向き合っていた。だから、自分の発明が故意に悪用されるなんてことは、心底望まないはずた。まあ俺も彼女が作った発明を、そんな風には使いたくはない。ただ……
懐かしそうにガレージの中を眺めている彼女の横顔を見つめながら、俺は小さく息を吐き出す。
「でもせっかく戻ってこれたのに、好きなことができないって残念だな……」
俺はそんな言葉を呟きながら、真那と同じようにガレージの中を見渡す。けれど次に耳に届いたのは、自分の予想に反して、彼女らしいいつもの明るい声だった。
「まあこればっかりは仕方ないよ。歩のおかげでこうやって好きな場所に戻ってこれただけでも奇跡なんだし」
「……」
あっけらかんとした真那の声に、思わず俺の方が押し黙ってしまう。自分がもし真那と同じような立場だったら、果たして今の彼女のように素直に自分の現状を受け入れることが出来ただろうか……。いや、きっと無理だろう。俺にしても椿にしても、真那のこういう明るい性格に随分と救われてきたのだから。
そんなことを黙ったまま考えていると、真那が続け様に声を発した。
「それにほら、私って天才だからいくら命があったとしてもアイデアが尽きることないでしょ?」
「そういうことをサラッと言える真那の精神が凄いよ」
尊敬が度を越えて逆に呆れ返ってしまった俺の言葉を、真那は素直に褒められたとでも思ってしまったようで、「でしょ!」と嬉しそうな声を発する。そしてこちらを振り返ってニコリと笑った。
「でも歩はやりたいことがあるなら、やり残したらダメだからね」
「……」
屈託のない笑顔でそんな無茶な言葉を告げてくる真那。俺はそんな彼女の姿を見て、思わず目を逸らしてしまう。