「うわーッ! 私の机、まだちゃんと残してくれてたんだ!」
突然背後から大声が聞こえてきて俺はビクリと肩を震わせた。そして慌てて目を開けると後ろを振り返る。
「すごい! 工具もパーツもそのまま残ってる! あ、おじさん電源ユニットも残してくれてたんだ!」
そう言ってぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいたのは、いつの間に現れたのか、ガレージの作業机の前にいた真那だった。彼女らしい相変わらずな登場の仕方に、思わず肩の力が抜けてしまう。
「歩! ちゃんとオルゴール鳴らしてくれたんだね」
こちらを向いた真那はそう言うと、今度はスキップでもするんじゃないかと思うような軽快な足取りで俺の方へと近づいてくる。
「お前な、せっかくオルゴール鳴らしたのにさっそく……」
「歩ありがと! 私の可愛い宝物たちを残してくれて!」
よほど嬉しかったのか、俺が喋り切る前に真那はそんな言葉を口にすると、あろうことか正面からいきなり抱きついてきた。突然の出来事に、頭の中が一瞬真っ白になる。
「ちょ、ちょっと落ち着けって! 近い、近いから!」
慌てふためく俺の言葉に真那もやっと我に戻ったのか、彼女は「あ、ごめん!」と言って慌てて俺の身体から離れた。
「いやーつい嬉しくなっちゃって……抱きついちゃった」
「…………」
さすがの真那も今のは恥ずかしかったようで、頬を赤くしながら照れ隠しのようにピッと舌を出していた。まあおそらく……俺のほうは顔が真っ赤になってると思うけど。
俺は無駄な抵抗だと思いながらも、恥ずかしがっていることを誤魔化すつもりでわざとらしく咳払いをする。すると目の前にいる真那が再び嬉しそうに口を開いた。
「やっぱり私にとってこの場所は一番特別だったなぁ」
彼女はそう言うとガレージの空気を味わうかのように大きく息を吸い込む。
「……本当だったんだな」
「え?」
ぼそりと呟いた俺の言葉に、真那が目をぱちくりとさせながらこちらを見た。
「オルゴールを鳴らせばまた会えるって話しだよ」
そんなことを口にした自分の耳に聞こえるのは、真那と俺とを繋ぎ止めるオルゴールの音色。それは不思議なほど、時間が止まった世界によく響いていた。
「だからいつも言ってるでしょ。私は偉大な発明家だって!」
「今回だけだろ」
からかうような口調で言葉を返せば、「もうッ」と真那がわざとらしく頬を膨らませる。
「今回だけ、じゃなくて今回も、でしょ?」
真那はそう言うと腰に手を当てて自信たっぷりに胸を張った。俺はそんな彼女を見てクスリと笑う。
「まあでも確かに、真那は偉大な発明家だよ」
そう。彼女がこの不思議なオルゴールを作ることがなかったら、俺はあの日からもう二度と真那に会うことはなかった。こうやってふざけ合うことも、彼女の無邪気な笑顔を見ることも永遠になかったのだ。
突然背後から大声が聞こえてきて俺はビクリと肩を震わせた。そして慌てて目を開けると後ろを振り返る。
「すごい! 工具もパーツもそのまま残ってる! あ、おじさん電源ユニットも残してくれてたんだ!」
そう言ってぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいたのは、いつの間に現れたのか、ガレージの作業机の前にいた真那だった。彼女らしい相変わらずな登場の仕方に、思わず肩の力が抜けてしまう。
「歩! ちゃんとオルゴール鳴らしてくれたんだね」
こちらを向いた真那はそう言うと、今度はスキップでもするんじゃないかと思うような軽快な足取りで俺の方へと近づいてくる。
「お前な、せっかくオルゴール鳴らしたのにさっそく……」
「歩ありがと! 私の可愛い宝物たちを残してくれて!」
よほど嬉しかったのか、俺が喋り切る前に真那はそんな言葉を口にすると、あろうことか正面からいきなり抱きついてきた。突然の出来事に、頭の中が一瞬真っ白になる。
「ちょ、ちょっと落ち着けって! 近い、近いから!」
慌てふためく俺の言葉に真那もやっと我に戻ったのか、彼女は「あ、ごめん!」と言って慌てて俺の身体から離れた。
「いやーつい嬉しくなっちゃって……抱きついちゃった」
「…………」
さすがの真那も今のは恥ずかしかったようで、頬を赤くしながら照れ隠しのようにピッと舌を出していた。まあおそらく……俺のほうは顔が真っ赤になってると思うけど。
俺は無駄な抵抗だと思いながらも、恥ずかしがっていることを誤魔化すつもりでわざとらしく咳払いをする。すると目の前にいる真那が再び嬉しそうに口を開いた。
「やっぱり私にとってこの場所は一番特別だったなぁ」
彼女はそう言うとガレージの空気を味わうかのように大きく息を吸い込む。
「……本当だったんだな」
「え?」
ぼそりと呟いた俺の言葉に、真那が目をぱちくりとさせながらこちらを見た。
「オルゴールを鳴らせばまた会えるって話しだよ」
そんなことを口にした自分の耳に聞こえるのは、真那と俺とを繋ぎ止めるオルゴールの音色。それは不思議なほど、時間が止まった世界によく響いていた。
「だからいつも言ってるでしょ。私は偉大な発明家だって!」
「今回だけだろ」
からかうような口調で言葉を返せば、「もうッ」と真那がわざとらしく頬を膨らませる。
「今回だけ、じゃなくて今回も、でしょ?」
真那はそう言うと腰に手を当てて自信たっぷりに胸を張った。俺はそんな彼女を見てクスリと笑う。
「まあでも確かに、真那は偉大な発明家だよ」
そう。彼女がこの不思議なオルゴールを作ることがなかったら、俺はあの日からもう二度と真那に会うことはなかった。こうやってふざけ合うことも、彼女の無邪気な笑顔を見ることも永遠になかったのだ。