約束の日の空は、自分の気持ちとは裏腹に、疑うことができないほどの澄み切った青さだった。
「絶好のバーベキュー日和だな」
俺はそんな言葉をぼそりと呟くと、ガレージから一歩出て片目を瞑って空を見上げた。首筋には早くもじわりと汗が滲んでいる。けれど今の自分には、そんな暑さなんて対して気にならなかった。
俺は左手に握っていたオルゴールを見つめると、早鐘を打つ心臓を落ち着かせようとゆっくりと息を吸い込む。
あれから一週間。真那と会ったこと、そして真那があの時言ったことが本当かどうかを試す時がやってきた。
俺は深く息を吐き出しながら、オルゴールの蓋を開けようとそっと右手の指先を近づけた。と、その時。ズボンのポケットに入れているスマホが震えた。誰だよ、と思いスマホを取り出すと、それは真一からのメッセージで画像付きだった。メッセージを開けてみると、『誕生日おめでと!』という言葉と共に、楽しそうなバーベキューの写真が目に入る。
「あいつ……」
俺は呆れたようにため息をついた後、ふっと一瞬だけ口元を緩ませる。そしてメッセージには返事をせずに、そのままスマホをポケットへと戻した。
きっと真一のことだから一緒に写真に写っていた椿から誕生日のことを聞いて、慌てて送ってきたのだろう。かたや椿のほうは相変わらず律儀で、毎年必ずきっちりと12時ジャストにメッセージを送ってきてくれる。
そう、真那との再会を約束した今日は、俺が17歳になった誕生日でもあるのだ。
本当なら去年の今頃、俺はこのプレゼントを直接彼女の手から受け取る予定だった。それがいつの間にか俺の方が歳上になり、それどころか、真那からもらうはずだったプレゼントを使ってもう一度彼女と会おうとしている。
人生何が起こるかわからないと言うけれど、一年前の自分は、まさかこんな展開になるなんて夢にも思わなかった。
俺は再び大きく息を吸って覚悟を決めると、ゆっくりと右手の指先をオルゴールへと近づていく。そしてあのS字マークのような装飾にそっと触れた。先週は気付かなかったけれど、おそらくこの装飾はオルゴールの蓋と本体を繋ぎ止めている鍵のような役割になっているのだろう。
あれだけピクリとも動かなかったはずの小さな装飾は、まるで魔法が解けたみたいに簡単に動かすことができるようになっていた。するとその瞬間、パチンという音と共にオルゴールの蓋が開いた。
「……」
思わず目を瞑った瞬間だった。俺の耳に聞こえてきたのは、柔らかな音色で奏でられるあのメロディ。どうやら一週間経つと鳴らすことができるというのは本当だったみたいだ。ということは、これで俺はもう一度――
「絶好のバーベキュー日和だな」
俺はそんな言葉をぼそりと呟くと、ガレージから一歩出て片目を瞑って空を見上げた。首筋には早くもじわりと汗が滲んでいる。けれど今の自分には、そんな暑さなんて対して気にならなかった。
俺は左手に握っていたオルゴールを見つめると、早鐘を打つ心臓を落ち着かせようとゆっくりと息を吸い込む。
あれから一週間。真那と会ったこと、そして真那があの時言ったことが本当かどうかを試す時がやってきた。
俺は深く息を吐き出しながら、オルゴールの蓋を開けようとそっと右手の指先を近づけた。と、その時。ズボンのポケットに入れているスマホが震えた。誰だよ、と思いスマホを取り出すと、それは真一からのメッセージで画像付きだった。メッセージを開けてみると、『誕生日おめでと!』という言葉と共に、楽しそうなバーベキューの写真が目に入る。
「あいつ……」
俺は呆れたようにため息をついた後、ふっと一瞬だけ口元を緩ませる。そしてメッセージには返事をせずに、そのままスマホをポケットへと戻した。
きっと真一のことだから一緒に写真に写っていた椿から誕生日のことを聞いて、慌てて送ってきたのだろう。かたや椿のほうは相変わらず律儀で、毎年必ずきっちりと12時ジャストにメッセージを送ってきてくれる。
そう、真那との再会を約束した今日は、俺が17歳になった誕生日でもあるのだ。
本当なら去年の今頃、俺はこのプレゼントを直接彼女の手から受け取る予定だった。それがいつの間にか俺の方が歳上になり、それどころか、真那からもらうはずだったプレゼントを使ってもう一度彼女と会おうとしている。
人生何が起こるかわからないと言うけれど、一年前の自分は、まさかこんな展開になるなんて夢にも思わなかった。
俺は再び大きく息を吸って覚悟を決めると、ゆっくりと右手の指先をオルゴールへと近づていく。そしてあのS字マークのような装飾にそっと触れた。先週は気付かなかったけれど、おそらくこの装飾はオルゴールの蓋と本体を繋ぎ止めている鍵のような役割になっているのだろう。
あれだけピクリとも動かなかったはずの小さな装飾は、まるで魔法が解けたみたいに簡単に動かすことができるようになっていた。するとその瞬間、パチンという音と共にオルゴールの蓋が開いた。
「……」
思わず目を瞑った瞬間だった。俺の耳に聞こえてきたのは、柔らかな音色で奏でられるあのメロディ。どうやら一週間経つと鳴らすことができるというのは本当だったみたいだ。ということは、これで俺はもう一度――