黙ったまま立ち尽くしていると、手のひらをそっと離した真那が、今度はその手を俺の額へと伸ばしてきた。そしていきなりデコピンを放った。
「いてッ」
「こら、私の大発明にノーコメントか?」
そう言って唇を尖らせる真那。けれど額を押さえて痛がる自分を見てすぐにぷっと吹き出す。
「ノーコメントも何も理解できないって……」
昔と何一つ変わらない真那の調子に、俺はやっと呆れた口調で声を発することができた。すると何故か真那も呆れた声で「仕方ないなぁ」と呟くと、俺が持っていたオルゴールを手に取った。そしてコホンとわざとらしく咳払いをすると説明を始める。
「このオルゴールを鳴らすとね、10分間だけ時間を止めることができるの。そしてオルゴールが鳴っている間、鳴らした人は好きだった初恋相手に出会うことができる。そう、だからつまり、その……」
それまで流暢に説明をしていたはずの彼女が、急にモゴモゴと恥ずかしそうにして口ごもる。その理由を察してしまった俺は頬をカッと熱くすると慌てて口を開いた。
「おいちょっと待てよ! それってつまり俺が……」
急に目の前に現れた、自分にとってとても大切だった人。そして何の心の準備もなく筒抜けになってしまう自分の気持ち。
俺は全身が一気に熱くなるのを感じながらも、それを誤魔化すように強気な口調で言葉を放つ。
「嘘だ、そんなのデタラメだろ」
「違うの?」
夕陽を反射して輝く瞳が、上目遣いに俺の顔を覗き込んできた。恥ずかしくなった俺はすぐに視線を逸らすと、真那からそっぽを向く。すると彼女がクスクスと笑う声が聞こえてくる。
「相変わらず君は素直じゃないなー」
「…………」
愉快げな声で笑い続ける真那のことを、俺はチラッと横目で睨む。
彼女の動きに合わせて揺れる左右に括った髪も、着ているブレザーの制服も、見れば見るほどやっぱり自分の記憶にいる真那と一致する。
頭で理解するよりも先に、俺の心は目の前にいる彼女が本物の真那なのだと受け入れ始めていた。
俺はゴクリと喉を鳴らすと、さっきの真那の質問にはあえて答えず、気になったことを聞いてみた。
「ってことは……このオルゴールを鳴らし続ければ、その……真那にずっと会えるってことか?」
バカなことを言っているとわかっていながらも、俺は聞かずにはいられなかった。
もしもこのオルゴールに本当にそんな力があるなら、俺はまた真那と一緒に生きることができる。あの日からずっと止まっていた自分の心は、この世界の時間を止めることで動き出せるかもしれない。
そんな淡い期待の芽が胸の奥底で顔を出した時、何やら考え込んでいた真那が再び口を開いた。
「うーん、半分当たりかな……」
「なんだよ半分って」
「いてッ」
「こら、私の大発明にノーコメントか?」
そう言って唇を尖らせる真那。けれど額を押さえて痛がる自分を見てすぐにぷっと吹き出す。
「ノーコメントも何も理解できないって……」
昔と何一つ変わらない真那の調子に、俺はやっと呆れた口調で声を発することができた。すると何故か真那も呆れた声で「仕方ないなぁ」と呟くと、俺が持っていたオルゴールを手に取った。そしてコホンとわざとらしく咳払いをすると説明を始める。
「このオルゴールを鳴らすとね、10分間だけ時間を止めることができるの。そしてオルゴールが鳴っている間、鳴らした人は好きだった初恋相手に出会うことができる。そう、だからつまり、その……」
それまで流暢に説明をしていたはずの彼女が、急にモゴモゴと恥ずかしそうにして口ごもる。その理由を察してしまった俺は頬をカッと熱くすると慌てて口を開いた。
「おいちょっと待てよ! それってつまり俺が……」
急に目の前に現れた、自分にとってとても大切だった人。そして何の心の準備もなく筒抜けになってしまう自分の気持ち。
俺は全身が一気に熱くなるのを感じながらも、それを誤魔化すように強気な口調で言葉を放つ。
「嘘だ、そんなのデタラメだろ」
「違うの?」
夕陽を反射して輝く瞳が、上目遣いに俺の顔を覗き込んできた。恥ずかしくなった俺はすぐに視線を逸らすと、真那からそっぽを向く。すると彼女がクスクスと笑う声が聞こえてくる。
「相変わらず君は素直じゃないなー」
「…………」
愉快げな声で笑い続ける真那のことを、俺はチラッと横目で睨む。
彼女の動きに合わせて揺れる左右に括った髪も、着ているブレザーの制服も、見れば見るほどやっぱり自分の記憶にいる真那と一致する。
頭で理解するよりも先に、俺の心は目の前にいる彼女が本物の真那なのだと受け入れ始めていた。
俺はゴクリと喉を鳴らすと、さっきの真那の質問にはあえて答えず、気になったことを聞いてみた。
「ってことは……このオルゴールを鳴らし続ければ、その……真那にずっと会えるってことか?」
バカなことを言っているとわかっていながらも、俺は聞かずにはいられなかった。
もしもこのオルゴールに本当にそんな力があるなら、俺はまた真那と一緒に生きることができる。あの日からずっと止まっていた自分の心は、この世界の時間を止めることで動き出せるかもしれない。
そんな淡い期待の芽が胸の奥底で顔を出した時、何やら考え込んでいた真那が再び口を開いた。
「うーん、半分当たりかな……」
「なんだよ半分って」