「凄いでしょ! 私の世紀の大発明!」
 
 背中から突然聞こえてきたその声に、俺の心臓がビクリと震えた。それと同時に、思わず呼吸が止まってしまう。
 
 ありえない……
 
 バクバクと激しく脈打つ鼓動を耳の奥で感じながら、俺は頭の中でそんな言葉を何度も呟いた。けれどその言葉を否定するかのように、声の主が再び口を開く。

「でも驚いたなー。まさか君の初恋の人がこの私だったなんて」

 底抜けに明るくて、まるで夏の太陽みたいに温かい声。
 もう二度と聞くことができないと思っていたはずのその声に、激しく心が揺さぶられる。俺は乱れる呼吸を必死に抑えながら、ゆっくりと後ろを振り返った。
 目を突き刺すような夕暮れの光。鮮やかなほどオレンジ色に輝く世界の中で浮かび上がる一人のシルエット。
 眩しさに一瞬目を細めた俺の視界に映ったのは、あの日と同じように夕陽を背にして優しく微笑んでいる、真那の姿だった。

「これはどういう……」

 信じられない光景に、俺は思わず身動きが取れなくなってしまう。声も呼吸も言葉も、何一つ喉を通らない。

「だから言ったでしょ。私はいつか偉大な発明家になるんだって」
 
 目の前にいる彼女はそう言って、黄昏に包まれる景色の中を一歩踏み出した。その声も歩き方も、俺の記憶の中に刻まれている真那とまったく同じだ。けれど、こんなことって……