微睡みの中、ずっと梅雨の音が鳴いていた。
 耳元で流れているみたいに不快で、おもわず瞼を起こし、枕元にあるスマホを取ってイヤフォンを差す。あいみょんの『マリーゴールド』を流して、僕は天井を見上げた。
 ずぶ濡れになって帰った次の日、僕は季節外れの風邪にかかってしまった。まるでバチでも当たったみたいで、むしろ、今後の笑い話にでもなりそうだと思った。
 ただ、一つ気がかりなのが、菫さんのことだった。
 いちおう連絡はしてあるけど、最低でも、あと四日くらいは会いに行くことができない。もちろん菫さんがくることも無理なわけで、会える時間が減ってしまった。
 菫さん、今どうしているだろうか。
 といっても、僕と会えなくても、大丈夫そうだとは思っていた。
 でも、そのほうが良いのかもね。
 楽しみの一つであるくらいのほうが、僕には気が楽かもしてないから。
 寝返りを打って、大きく息を吐く。熱のせいで頭がぼうっとして、色々考えてしまって、そのせいでいっそうくらくらする。ひどく、悪循環だった。
『麦わらの、帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる』
 そう歌詞が流れて、菫さんの姿が頭に浮かんでくる。
 会いたいなぁ、菫さんに。
 あなたの笑顔が、たまらなく恋しい。
 なんだか、体調とかどうでも良くなってきた。
 体を起こしてベッドから出ようとしたけど、予想以上に体は重いし、めまいはするしで、床に倒れ込んでしまう。
 なんで、風邪なんか引いたんだろう。雨の中を走らなければ、こんなことにはならなかったのに。
 床がひんやりしている。
 気持ち良くて、かくかくと瞼が落ちていくけど、僕はぶんぶんと頭を振った。
 こんなところで、寝るわけにはいかない。
 菫さんに、会いに行かないと。
 でも、一歩も動けなくなってしまった。
 気づけば、死んだように眠っていた。