公園の端のほうに、屋根付きのベンチがぽつりと立っていた。
 側には一歩で渡れる小さな川があり、カンカン照りの日差しでキラキラと眩しく光っていた。川を越えた先には少し黒ずんだような木の屋根があって、そのせいかどこか涼し気。
 なんだか、良い感じだった。
 気になって向かってみると、葉の擦れる音に出迎えられる。日陰は思っていたより快適で、葉っぱをすり抜けてきた風がほんのり涼しい。冷房に頼り切りな日本だけど、あながち自然も馬鹿にはできないな、と改めて偉大さを感じさせられていた。
 講義までまだ時間もあるから、僕はここで時間を潰すことにした。
 ベンチに手をかけ、だらりと腰かけて日向のほうを眺めた。小学生くらいの子どもたちが走り回っていて、つい笑みが零れていた。
 学校終わりなんだろうか。
 懐かしいな、輝いているな、とジュブナイルな写真を見た気分になる。
 気づけば、僕は一眼レフカメラをバックから取り出していた。
 僕のもう一つの瞳から、景色を覗く。
 ぱしゃり、とシャッター音が時を止める。
 ファインダーから目を離し、プレビューボタンを押す。
 夏風に揺れている木々に、遊具を使って遊ぶ子どもたち。子どもがきゃっきゃっと笑っているのが分かって、特別なことをしているわけではないけど、すごく楽しそう。
 ほんの少しだけ、わざとぼかしているからか、懐かしさが増している気がした。
 だからかもしれない。
 僕はこの写真に引き付けられていた。
 幼い頃は、馬鹿みたいに笑って、しょうもないことではしゃいで、怒られてわーわー泣いて。
 なにも、考えなくて良くて。
 今よりもっと、視界が澄んで見えて。
 とにかく、楽だった。
 ここにいると落ち着いて、心が休まる気がした。
 公園に入るのなんて何年ぶりだろう、とつい思い返してしまうくらい久しぶり。幼いころ公園にいくのは当たり前だったから気づかなかったけど、すごく良い場所だったんだな、と改めて感じさせられた。
 また、来ようと思った。