気分転換にでもゲームがしたくて、高校時代にちょびっと使ったきりだったNintendo Switchを探してみる。たしか、百均のセリアで買った白い収納ケースに入っていたはず。
 でも僕が手に取ったのはSwitchでも、PS Vitaでもなく。
 菫さんの写真が記録されている、SDカードだった。
 それを見つめて、近くにあるごみ箱に放ろうとした。
 けど一歩手間で踏み止まり、課題が表示されていたパソコンの画面を消す。深く息を吐き、そっとSDカードを差す。
 なんとなく、写真を見返すことにした。もしかしたら、彼女と関係のない写真も入っているかもしれない。そうだとしたら、とてももったいない。
 けれど、これを僕に見る資格があるのかな。
 なにも言わずに、勝手に離れてしまったのに。
 そんなことが脳裏をちらつくけど、すぐに左右に首を振った。
 これは、ただ確認をするだけ。
 別に、彼女に未練があるわけじゃない。
 そう心に言い聞かせて、力強くダブルクリックしてデータを開く。
 最初に出てきたのは、公園の写真。
 それから、まだ名前のない白猫。
 最近見かけないけど、やっぱりきれいな青い瞳をしている。くりっと丸くて、白目が埋まってしまいそうなくらい大きい。
 ブルーモーメントを見つめた、彼女の瞳によく似ている気がして、見比べてみる。でも、僕は頬を掻きながら、少しだけ笑ってしまった。
 想像以上に似ていなかった。
 とはいえ、多分、なんでも良かったんだと思う。
 どんなことだって彼女に結び付けてしまうような、そんな気がするから。
 気づけば、彼女にばかり目がいっている。
 彼女のことばかり思い出して、彼女をいつまでも思い浮かべていて、彼女でできているんじゃないかって、感じてしまうくらい。
 こんなんじゃ、ダメなのかもしれない。
 もう会わないと決めておきながら、いつまでも心の奥底では、あの夏の思い出が離れようとしてくれなくて。
 彼女への気持ちが、いつまで経っても咲き続けている。
 どうにかしなきゃいけない。
 でも、いったいどうしろっていうんだろうか。
 いつか彼女を忘れられるんだろうか、僕は。
 そんなことを、ずっと、繰り返し考え続けていた。