精肉店の正雄さん、花屋さんの池田さん、主婦の田中さんと挨拶をかわしつつ、商店街を抜けた。
 外に出ると、さっきまで喋りっぱなしだったせいか、とたんに静かになった気がする。中にいたときには聞こえなかった秋風が、とつじょ耳に押し寄せてくる。
 ちらりと振り返れば、僕はおもわず足を止めていた。
 小さな商店街だな、と改めて見ると感じる。
 それでも小学生の僕には、とても大きく映っていたんだろう。色々なものが売っていて、にぎやかで、活気がキラキラして星屑みたいで。
 まるでテーマパークに行くような、そんな気分だったのかな。
 だから毎日のように、母さんの買い物についていった。そのおかげか今もこうして、商店街にいる多くの人と仲良くさせてもらっている。
 商店街に行くのは、色々おすそ分けしてくれるということもあるけど、それ以外にも、面白いし、なにかと気にかけてくれるし。
 いるだけで元気をもらえるような、そんな商店街。
 今もこうして大学をさぼらずにいられるのは、『花の商店街』のおかげなのかもしれない。