泉場公園に行こうと思ったのは、本当にただの気まぐれだった。
 大学二年生になって、多くの大学生がだらけてくるころ。それに夏休み前ということもあってか、外は今年の最高気温に三十四度に達していた。湿気で髪はうねるし、セミの声はうるさいし、通学するには最悪だった。
 喉の渇きに耐え切れず、家の近くのコンビニで買ったミルクティーは、下に触れると若干の気持ち悪さを感じるほどまでぬるくなってしまった。でも喉は渇くから、飲まずにはいられない。
 色々あって今、とにかくため息が止まらなかった。
 そんなときに見つけたのが、泉場公園、というなんだか涼しそうな名前の公園だった。
 今まで何度も通り過ぎていた公園だけど、名前を知ったのは今日が初めて。
 なんとなく、立ち寄ってみたくなった。
 いつも余裕を持って家を出ているから、寄り道する時間は十分にあった。
 じいっと突っ立て見ていると、なんだか、だんだんと涼しそうな場所に見えてきた。気のせいだろうな、と思いながらも足を踏み入れる。
 泉場公園には珍しい遊具があったり、他では見られない緑があったりするわけではなく、とても普通だった。強いていうなら、公園全体が木に覆われていて、都会を抜け出したみたいな感覚を味わえるくらい。
 それなのに僕が行ってみたいと思ったのは、忘れかけていた子ども心、というものかもしれない。
 僕は今年で二十歳になり、酒も飲めるしタバコも吸えるしで、ある意味では子どもと大人の境目。そういうのが湧いてきても、おかしくない時期なのかもしれない。まあ、あまり関係ないとも思うけど、そういうことにしておく。