机の上に置いてある、一眼レフカメラをトートバックにしまった。どこで撮るかはまったく決めていなけど、とにかく写真は撮る予定だった。
一階に降りてリビングに向かい、朝食を取ってからソファーに腰掛ける。テレビに映っているニュースをぼうっと眺めながら、熱々のカフェオレをちびちびと飲む。
テレビではアナウンサーが紅葉の映像を見ながら、「今年もそろそろ終わりですね」とニコニコと言っていた。このアナウンサー美人だな、と思いながらカフェオレをすすりつつ、深めのため息が零れていた。
まだ、秋なんだよね。
今年も終わりなのか、といつもなら思っているところだけど、なんだかここ最近はそう感じていた。
たぶん、夏が退屈だったからかもしれない。
またカフェオレを飲み、ため息を吐いていた。だいぶ、ぬるくなっていた。
テレビでは天気予報に移っていて、僕は続けて流し見していた。東京は晴れのち曇りのようで、でも中部のほうでは雨の予報となっていた。この様子だと明日は雨だろう。
……雨、雨か。
雨なんて、降らなければ良いのに。
でもそう思ってしまうの、傘持っていかなきゃとか、大学行くのだるいとか、そういうことではなくて。
雨が降るたびに、頭に浮かんでくるのが。
あのころいつも見ていた、彼女の笑顔ばかりだから。
彼女は、雨が嫌いだった。
理由は初めて会ったときに聞いたけど、当初の僕にはわけが分からなかった。
ただ、今なら思うのは。
僕が彼女だったとしても、雨を嫌いになるのかもしれない。
いっきにカフェオレを飲み干して一息ついていると、母さんに「時間大丈夫なの?」と言われる。「大丈夫」と答えたは良いものの、重い腰はなかなか上がらなくて、十五分くらい経ってから「行ってきます」と家を後にした。この時間が大学の講義に間に合うギリギリの時間だった。
外に出ると、涼しさの中にも懐かしさのようなものがあった。空気を吸ってみると、いつもより湿っている気がする。
ほんの少しだけど、夏みたいな匂いがした。
これは、にわか雨くるかもしれないな。
ため息を吐きつつも、玄関まで折り畳み傘を取りにいってから向かうことにした。
電車に乗って大学の最寄り駅で降り、あとはひたすら歩く。
それなりに都会で敷地がないのもあってか、僕の通っている文慶大学まで約徒歩ニ十分かかる。大きい通りを真っ直ぐ進んで、右に曲がって左にある交差点を渡れば、すぐに文慶大学、略して文大はある。この道が最短で、簡単だから迷うことはない。
そのいつもの道の間には、泉場公園があった。
僕はちらりと横目で見てしまってから、頭を掻いてしまいながら前を向いた。
ここはもう行くことのない、僕には関係ない場所だった。
だけど、大切な場所でもあった。
一階に降りてリビングに向かい、朝食を取ってからソファーに腰掛ける。テレビに映っているニュースをぼうっと眺めながら、熱々のカフェオレをちびちびと飲む。
テレビではアナウンサーが紅葉の映像を見ながら、「今年もそろそろ終わりですね」とニコニコと言っていた。このアナウンサー美人だな、と思いながらカフェオレをすすりつつ、深めのため息が零れていた。
まだ、秋なんだよね。
今年も終わりなのか、といつもなら思っているところだけど、なんだかここ最近はそう感じていた。
たぶん、夏が退屈だったからかもしれない。
またカフェオレを飲み、ため息を吐いていた。だいぶ、ぬるくなっていた。
テレビでは天気予報に移っていて、僕は続けて流し見していた。東京は晴れのち曇りのようで、でも中部のほうでは雨の予報となっていた。この様子だと明日は雨だろう。
……雨、雨か。
雨なんて、降らなければ良いのに。
でもそう思ってしまうの、傘持っていかなきゃとか、大学行くのだるいとか、そういうことではなくて。
雨が降るたびに、頭に浮かんでくるのが。
あのころいつも見ていた、彼女の笑顔ばかりだから。
彼女は、雨が嫌いだった。
理由は初めて会ったときに聞いたけど、当初の僕にはわけが分からなかった。
ただ、今なら思うのは。
僕が彼女だったとしても、雨を嫌いになるのかもしれない。
いっきにカフェオレを飲み干して一息ついていると、母さんに「時間大丈夫なの?」と言われる。「大丈夫」と答えたは良いものの、重い腰はなかなか上がらなくて、十五分くらい経ってから「行ってきます」と家を後にした。この時間が大学の講義に間に合うギリギリの時間だった。
外に出ると、涼しさの中にも懐かしさのようなものがあった。空気を吸ってみると、いつもより湿っている気がする。
ほんの少しだけど、夏みたいな匂いがした。
これは、にわか雨くるかもしれないな。
ため息を吐きつつも、玄関まで折り畳み傘を取りにいってから向かうことにした。
電車に乗って大学の最寄り駅で降り、あとはひたすら歩く。
それなりに都会で敷地がないのもあってか、僕の通っている文慶大学まで約徒歩ニ十分かかる。大きい通りを真っ直ぐ進んで、右に曲がって左にある交差点を渡れば、すぐに文慶大学、略して文大はある。この道が最短で、簡単だから迷うことはない。
そのいつもの道の間には、泉場公園があった。
僕はちらりと横目で見てしまってから、頭を掻いてしまいながら前を向いた。
ここはもう行くことのない、僕には関係ない場所だった。
だけど、大切な場所でもあった。