ビーーーーーー!!!!

全力で高志を押し返したら彼の肘がハンドルに当たって、クラクションが大きな音を立てて鳴り響いた。
暗闇にまばらにいたカップルらしき人たちがこちらを見ている気がして、私の緊張は大きくなる。

高志は呆れたようなため息をつくと、身を整えながら言う。

「お前さ、なんなの?そんなに嫌なわけ?俺たち恋人だよな?」

「そうだけど、私初めてだから怖いし、ここでなんて嫌だよ。」

「いつまで逃げるんだよ。」

「…逃げてるわけじゃないし。」

「はぁ、ちょっとは俺の気持ちも考えろよ。」

「そんなっ、じゃあ私の気持ちはどうなるの?」

「お前っていつも自分ばかりだよな。」

「はあ?高志こそ自分勝手じゃん。星を見るために来たんじゃないの?何しに来たの?スピードだって出しすぎで危なかったし、私の事全然考えてないじゃない!」

「もうお前マジうぜえ。消えろ。」

「消えてやるわよ!」

お互い感情のまま好き勝手なことを言い放つと、険悪な沈黙が訪れた。
私は怒り心頭のまま黙って車を降りる。
勢いのままドアをバンっと閉めると、振り向きもせず一人とぼとぼと歩き出した。

絶対、高志が追いかけてくると思った。
ごめん、言いすぎた、悪かったって。
それで私もごめんってして仲直りして…っていうお決まりのパターンだって思ってた。

なのに。
ブルルンとエンジン音が聞こえて、振り向いた時には高志の車は走り去っていった。