山の端から朝日が昇ろうとしている。
明るくキラキラとした白い光が周囲を照らし始めた。

「さて、どうやって帰ろうかなぁ?」

深夜の暗闇の中、通ってきたはずの参道が見当たらない。一体私はここまでどうやって来たのだろう。携帯を確認すると、未だ圏外のままだった。

神様たちに声をかけようかと思ったが、今さら戻るなんて野暮な気がした。せっかく二人気持ちを通わせたのだから、存分にラブラブしてほしい。部外者は消える。それが私のラブラブ大作戦だ。

下山する道を見つけるために境内をうろうろと歩いていると、「葵」と名前を呼ばれて私は振り返った。
そこには火の神様が一人で立っていた。

「葵、咲耶姫と話をさせてくれてありがとう。」

「いや、私は何もしてないですよ。」

「お前の家まで送っていこう。」

火の神様はおもむろに私を抱える。

「きゃあっ!」

突然横向きに抱えられて、そう、これはいわゆるお姫様抱っこってやつで、私は思いっきり動揺してしまう。

「お、おろしてください~!」

「しっかりつかまるのだ。」

「ひ、ひゃぁぁぁぁ~。」

火の神様が地を蹴った瞬間、ものすごいスピードで空へのぼった。思わず火の神様の首もとへしがみつく。

ああ、咲耶姫様ごめんなさい。
私、火の神様にべったりくっついています。だけどしがみつかないと落ちちゃうんです~!