「お前も飲め。」

「え?はい、いただきます!」

こたつの対面に座り直した私たちは、ガンガンお酒を飲みながらスルメを食べ始めた。先程までのお菓子は女子会のほんのプロローグに過ぎない。本番はこれからと言わんばかりの咲耶姫様と私。

「火の神とは結婚を約束した恋人だったのだ。」

「婚約者ですか!」

咲耶姫様が語りモードになったので私は自然と姿勢を正す。他人の恋愛話は何だかドキドキわくわくしてしまう。

「ある日山火事が起こった。ひどい火事だった。そのときに、私は顔に火傷をおったのだ。それがこの痣だ。あとから駆けつけてきた火の神は、私を見ると驚いた顔をした。不甲斐ないと言い逃げていった。醜かったのだろう。皮膚は焼けただれていたのだからな。」

「ひどいっ!痛かったでしょうに、つらかったですね。」

「火傷は痛くはない。人間とは痛みの感覚が違うのでな。それよりも山を守れなかった事のほうがつらかった。私は山の神なのだからもっとしっかりと守らねばならなかった。」

「でも火事はどうすることもできないじゃないですか?」

「そうだな。だが私は山の神だ。もっとできることがあったはずなのだ。だから火の神も私を不甲斐ないと言ったのだろう。」

「そんな、あんまりです。」

山の神だから山を守らなければいけない。それはそうなのかもしれないけど、大火傷を負った咲耶姫様に不甲斐ないだなんて追い打ちをかけるような言葉、一体火の神様は何を考えているのか。

本当に、火の神様といい高志といい、男ってやつは何でこうもデリカシーがないのか。考えるとムカムカしてくる。