望月葵(もちづきあおい)、二十一歳。
私は今、よく知らない山の中で迷子になっている。
まさか二十歳を超えて迷子になろうとは、一体誰が想像しただろう。

きっかけは彼氏とのケンカだ。
些細なことでケンカした。

いや、些細なことか???
思い返せばかなり重要問題な事のような気がする。

彼氏である高志(たかし)は中学の同級生で、私が専門学校二年のときに偶然再会した。
近くの大学の学祭に行った時、高志はその大学の学生で、模擬店で売り子をしていた。高志から声を掛けてくれて、それで懐かしいねなんて意気投合してそのまま勢いで付き合い始めた感じだ。

けれど彼は大学生。
私は専門学校を卒業して就職。

社会人になってすっかり学生気分の抜けた私と、まだまだ学生の彼。
活動時間も考え方も最近ではすれ違いが生じていた。

それにつけてお互い休みの日が合わず、今日は久しぶりのデートだったのだ。
ファミレスで食事をした後、無計画に夜景を見に行こうと言い出す高志に、私は明日仕事なのになと思いつつ渋々従った。

夜景は魅力的ではあるけど、もっと計画性を持って行きたいし、明日は仕事で早出の私の事なんてお構い無しな行動に正直引いた。