「…こたつ?」

部屋の中央には小さめの四角いこたつが置かれていた。机の上の丸い籠にはみかんがいくつか置いてある。

「ずいぶん濡れたのだな。着替えを用意しよう。」

そう言って持ってきてくれたのは、浴衣のようなものだった。
裾が長く、帯やら紐やらを渡されてもどうしていいかわからない。

「あの、すみません、着方がわかりません。」

正直に言うと、彼女は目を丸くし、そしてクスクスと笑った。

「ああ、すまない。人と話すのが久しぶりなので、自分の中の時代のズレが可笑しくてな。」

そしてまたクスクスと笑う。
一体何がそんなに可笑しいのか、さっぱりわからない私の手から帯と紐を抜き取る。

「着せてやろう。」

そう言って、優しい声色と手付きで私の着替えを手伝ってくれた。

促されてこたつへ入ると、その温かさにほうっとため息が出た。
先程までの緊張と恐怖がしゅるしゅると解けていく。

こたつの魔力はすごい。
一度入ったらもうここから出る気力をなくすのだから。

「あったか~い。」

私の呟きに、美人さんはまたクスクスと笑った。
笑い方さえ綺麗だなんて罪だ。