外は雨と雷で大荒れだ。
髪も服もずいぶん濡れた。
けれど建物の中にいるという安心感が、私の緊張を幾ばくか溶かしていく。

ここなら寒さもしのげる。
しばらくここで様子を見よう。
もう動くのは得策ではない。

携帯はここでも圏外と表示されていた。
時間はとっくに日付を越えている。

「…はぁ。」
「大丈夫か?」

ひときわ大きなため息をつくのと、背後から声が聞こえたのは同時だった。
ふわりと肌触りのよい布を肩に掛けられて、私は驚きのあまり声が出せず、ただ反射的に振り返った。

綺麗な漆黒の長い髪。
決して化粧が濃いわけでもないのに目鼻立ちがくっきりとした美人顔。睫が長く、宝石のようなキラキラとした瞳が印象的な美人が、心配そうな顔でこちらを見ている。
服装は何と言ったらいいのだろう。
着物ののようなワンピースのような、はたまた装束のような、昔歴史の本で見たものに似ている気がする。
そして、顔全体に赤っぽい大きな痣がある。

あまりの衝撃に私は言葉も発せず、ただ彼女を凝視した。動けなかったと言う方が正しいかもしれない。

綺麗で凛とした空気感が、彼女から発せられていることに肌で感じる。