夏祭りのあとも、私は何度か夕暮れ時に『うてな』へ行ってみようとした。
しかしそれはできなかった。
父の仕事小屋の敷地の最奥からあの場所へ通じていた道は、この世界では存在しなかった。
細い道があったはずの場所は硬い岩盤の地層で、そこを使うことを私は断念した。
上之社の大岩の裏から続いている道も、私はいくら捜しても発見することはできなかった。
もともとこちらからあの道を通ったことは、私にはなく、『うてな』からの帰り道としてしか使ったことはなかったので、そういうものなのだと割り切ることにする。
残る一つは――。
上之社の展望台の落下防止柵を乗り越え、その先の崖から落ちることだが、過去二度その方法で『うてな』へ行った時、助かったことを私は確実だとは思っていない。
あそこはとても狭い場所だし、運よく落ちた感覚だった。
野生の動物たちもよく足を滑らせて、麓に死体が転がっていると椿ちゃんも語っていた。
それは彼女の生きる世界での話ではあるだろうが、そこまでのリスクを冒して、あの場所へ行かなければならないような状況もない。
(だから……もう椿ちゃんとは会えないなぁ…)
そう思うと寂しくもあったが、ひと夏の楽しい思い出だったのだと、考えることもできた。
しかしそれはできなかった。
父の仕事小屋の敷地の最奥からあの場所へ通じていた道は、この世界では存在しなかった。
細い道があったはずの場所は硬い岩盤の地層で、そこを使うことを私は断念した。
上之社の大岩の裏から続いている道も、私はいくら捜しても発見することはできなかった。
もともとこちらからあの道を通ったことは、私にはなく、『うてな』からの帰り道としてしか使ったことはなかったので、そういうものなのだと割り切ることにする。
残る一つは――。
上之社の展望台の落下防止柵を乗り越え、その先の崖から落ちることだが、過去二度その方法で『うてな』へ行った時、助かったことを私は確実だとは思っていない。
あそこはとても狭い場所だし、運よく落ちた感覚だった。
野生の動物たちもよく足を滑らせて、麓に死体が転がっていると椿ちゃんも語っていた。
それは彼女の生きる世界での話ではあるだろうが、そこまでのリスクを冒して、あの場所へ行かなければならないような状況もない。
(だから……もう椿ちゃんとは会えないなぁ…)
そう思うと寂しくもあったが、ひと夏の楽しい思い出だったのだと、考えることもできた。