これには秀吉も頭を抱えた。
「これで下手に伊達とことを構えれば、せっかく落ち着いた天下がまた乱世になってしまうではないか」
だが。
近衛の姫は欲しい。
しばらく袖をこまぬいていたが、
「…では流言を流しましょう」
「流言、とな」
三成らしい小賢しい知恵である。
実のところこの作戦は早速、実行に移された。
まずは洛中に、
「近衛の姫さまには狐が憑いて、狐が悪さをしている」
といったようなデマゴーグを流し、それを秀吉が狐落としの調伏をしようと呼び出して、わがものにしようという計略である。
「何とも奇妙な噂が流れておりまする」
と、施薬院からの言上があるのを待って秀吉は、
「それは何と不憫な。ならばこの関白が直々に、狐落としの祈祷をば進ぜようほどに、左大臣に伝えよ」
となり、使者は三成が立った。