秀吉は内心でみずからの策がうまくいったことを喜んだが、
「わしにすれば姫は義理の姪でもあるゆえ、気がかりでならなんだ」
と心配そうな表情をつくってから、
「なれど案ずるには及ばぬ、この秀吉が姫に憑いた狐を退じてくれようぞ」
と胸を反らせ、
「誠にありがたき仕合わせにございまする」
進藤は再び平伏した。
「ただのう」
それには一つ約してもらわねばならぬことがある、と秀吉はいう。
「斯様に狐が憑いたと噂が立っては、嫁に欲しがる者もあるまいゆえ、この秀吉がしかるべき婿を探して進ぜよう」
「そこまでのお心遣い、御礼申し上げまする」
「それでよいな」
「殿下の御意のままに」
こうして進藤は退出したのだが、
「果たしてこれで」
なんとかなるのであろうか…と進藤は重たい足取りで近衛屋敷へと戻った。