黒川さんたちがいる教室の戸のところに着いた。


「麻倉さん、ちょっといい?」


 さっそく黒川さんがそう言った。


「……うん」


 すごく嫌。

 心の中ではそう思いながら返事をした。


「じゃあ、この間のところに行きましょ」


 黒川さんはそう言って、黒川さんの両側にいる生徒たちと共に歩き出した。

 私も嫌々、黒川さんたちのあとをついて行った。


 ……あれ……?

 少しだけ。
 違和感を覚えた。

 黒川さん。
 この間とは、なにか雰囲気が違うような……。

 あのときのような恐ろしいくらいの笑顔ではないけれど。
 違った意味で恐怖を感じるというか……。

 わからない。
 けれど。
 なにか良からぬものを感じる。



 そう思っていると。
 あっという間に体育館裏に着いた。


「…………」


 すぐに何か話してくると思った。

 けれど。
 黒川さんは話してこない。


 この沈黙が余計に恐怖を感じさせる。



「……ねぇ」


 そう感じていたら。
 黒川さんが口を開いた。


 けれど。
 黒川さんの声のトーンが。
 この間のときとは違う。
 どんよりとして冷ややかに感じた。

 その声を聞いた瞬間。
 背中にゾクッとしたものが走った。


 やっぱり何か良からぬことが起こる。

 そんな予感がした。