「逆咲先輩が罪悪感を感じることはないですよ」
 その『なにか』は昴流が言った言葉、というか呼んだ俺の名前で、ぽんと浮かんだ。
 逆咲。
 ちょっと変わった、俺の名字の意味というか、由来。もしかしたらこれが役に立つのでは。俺は急いでスマホを取り出した。
「ちょっと待っててくれ」
「……はい」
 なにか連絡するだけかと思ったのだろう。疑問が滲んだ声だったが、昴流はそれだけ言って大人しくいちごミルクに戻った。
 俺はある単語を入れて検索する。
 確か、少し前に噂を聞いた。あれはどこだったか。
 いくつかページを開いただけで、俺は目的のものを見つけた。
 これだ。
「鈴木。ちょっと付き合ってくれないか」
「……えっ」
 勢いよく立ち上がって言ったのだが、昴流は、少しぽかんとした。何故かその頬はうっすら赤くなっている。
 しかしすぐにそれは振り払われる。
「あっはい! ど、どこにでしょう」
 なにか、ちょっと慌てたような様子だったが、構っている余裕はない。
 もう夕方だ。暗くなれば探すのは大変だろう。
「いいところがあるかもしれない」
 それだけ言って、俺は昴流を促して裏庭を出て、校門も出た。
 向かったのは駅。調べたところによると、隣駅が一番近そうだったのだ。