弓道場は特に普段と変わった様子もなかった。
静かだ。今日は参加者も少ないからみんな帰ってしまったのかもしれない。
しかし逆に、まずいな、と俺は思った。
今、施錠されていたら当たり前のように入れない。勿論、鍵を回収することもできないだろう。無駄足になるかな、と思いつつもドアに手をかけた。
が、幸いなことに鍵はかかっていなかった。誰かまだ残っているようだ。俺は、ほっとした。
弓道場へ入ると部員が二、三人いた。とはいえ、練習はもう終えたようで隅のベンチで駄弁っているだけだったが。
「あ! 逆咲先輩。どうしたんですか?」
後輩の男子が俺を見止めて立ち上がって聞いてきた。わざわざ立たせるのも悪いと、俺は手つきでそれを制する。
「や、鍵忘れただけだから」
「そうですか」
彼はそのまま肯定して、俺は「終わったなら帰れよ」とだけ言って、更衣室へ向かった。「ういーっす」なんて気の抜けた声を背中に、バックヤードへのドアを開けて中へ入る。バックヤードは女子と男子の更衣室がそれぞれ、あとは用具を入れておく倉庫。
静かだ。今日は参加者も少ないからみんな帰ってしまったのかもしれない。
しかし逆に、まずいな、と俺は思った。
今、施錠されていたら当たり前のように入れない。勿論、鍵を回収することもできないだろう。無駄足になるかな、と思いつつもドアに手をかけた。
が、幸いなことに鍵はかかっていなかった。誰かまだ残っているようだ。俺は、ほっとした。
弓道場へ入ると部員が二、三人いた。とはいえ、練習はもう終えたようで隅のベンチで駄弁っているだけだったが。
「あ! 逆咲先輩。どうしたんですか?」
後輩の男子が俺を見止めて立ち上がって聞いてきた。わざわざ立たせるのも悪いと、俺は手つきでそれを制する。
「や、鍵忘れただけだから」
「そうですか」
彼はそのまま肯定して、俺は「終わったなら帰れよ」とだけ言って、更衣室へ向かった。「ういーっす」なんて気の抜けた声を背中に、バックヤードへのドアを開けて中へ入る。バックヤードは女子と男子の更衣室がそれぞれ、あとは用具を入れておく倉庫。