「……泣いたのなんて、久々だ」


最後に涙を流したのは、いつだっただろう。

よく思い出せないけれど、小さな頃だったような気もする。


「手、掴まれてたら拭えない」


彼女の手も、きっと僕の涙で濡れてしまった。


「拭わなくてもいいじゃない」


ああ、どうしてだろう。
その柔らかな優しい声を聴くと、何故か酷く懐かしい気持ちになるのは。


「泣いてる顔、綺麗」


彼女はそう言うと、僕の手を離して自分の首の後ろへと手を回した。