泣いているのは彼女じゃなくて、僕の方じゃないか。

小説を読んでも涙なんか流れなかったくせに、彼女の横顔を見て泣いてしまうなんて。

おかしな奴だ。 きっと、彼女だってそう思ってる。

それなのに、涙は不思議なくらいぼろぼろと止め処なく溢れてきてしまう。


「ご、ごめん」


涙を拭いながら、僕は顔を少し俯かせた。


「謝らなくてもいいのに」


彼女の静かな声が聞こえて、涙を拭っていた僕の手が彼女の温かな手に優しく包まれた。


「泣いてるところ、はじめて見た」


どこか微笑んでいるような声色で彼女は言う。