「記憶を失う前の自分と後の自分が、まるで別人に思えてしまって、全て偽りに思えて、その子は自分で自分を殺すんだ」


これまで出会った人たちから、ひっそりと姿を隠して、たったひとり。


「こういう物語なんだ。 説明が下手で、ごめんね」


少しだけ罰が悪そうにして言うと、彼女は首を横に振る。

その時、彼女の胸元で揺れるネックレスが薄暗く灯る電灯に反射してきらりと光った。


「その子は……」


彼女が微かに呟く。 視線は、僕たち2人の影に向けられていた。


「最期に、何を思い出してたんだろう」