その時、ふと彼女から視線を逸らして線路の方を見ると、電車が今には不釣り合いな音を鳴らして僕らの目の前へと停まった。

そして、電車の扉が開かれる。


「じゃあ、またね」


彼女はそう言うと、静かに僕のそばから離れる。

どうして、こっちを見てくれないんだ。


「ちょっと、待っ……」


彼女の細い腕を掴もうとしたのに、何故か手が届かない。

彼女は振り返ることなく、そのまま電車に乗り込んだ。

すると、電車はそれを待っていたかのようにゆっくりと扉を閉める。