「これが……俺の過去の全てだ」

「……」

言葉が出なかった。黒炎くんが勇気を振り絞って、私に話してくれたのに。この話をするのに相当な覚悟があったはずなのに。……引いているからじゃない、嫌いにもなっていない。むしろ、過去のことを聞いたら、より黒炎くんの側にいて支えてあげないといけないという気持ちになった。

けど、言葉が出ないのはなんて声をかけていいか迷っているから。
こんなにも辛くて、悲しい過去を話されたらどうしていいかわからない。

「……朱里が小さい頃に泊まりに来ていたときは親父も仕事だったし、兄貴はその仕事を手伝っていた。母親は病弱だったから、出来るだけ他人とは接触しないようにしていたから、朱里が俺の家族と会った記憶がないのはそもそも会っていないからなんだ」