「やっぱり美羽さんの手料理は美味しいです」

「黒炎。手料理を褒めて、美羽姉さんに媚びてるつもり?」

「違うよ。本当に美味しいと思っただけ」

二人は俺を本当の家族のように接してくれた。それがとても嬉しくて、なにより嘘の世界で生きてきた俺には今の生活が凄く幸せだった。

未だに俺の名字も家庭のことも聞いてこない。気を遣っているのだろうか。俺が如月家にお世話になってすぐの頃、会長が自分の家庭について話してくれた。

なんでも両親は早くに死んで、今は親戚にお世話になっているらしい。けれど、美羽さんの身体が弱いせいで迷惑をかけていると親戚とは別々の家で暮らしているとか。

高校卒業までの養育費は出すと約束はしてくれたものの、二人のことをあまりいいように見ていない。