黒炎くんが校門に向かおうと足を進めようとする。私は「うん、同じクラスだといいね」と小さく呟いた。

あれから何年も経ってるんだ。黒炎くんにも恋人くらいいるはず、だよね?
私は黒炎くんは付き合ってたわけじゃない。単なる幼馴染ってだけだ。

(なんか、胸のあたりがチクチクする……)

久しぶりに再会できて嬉しいはずなのに、今は“ただの幼馴染”という言葉が私の心を痛いくらいに引っ掻き回す。

―――だけど、まさか黒炎くんが恋してる相手が××だったなんて、このときの私は知る由もない。

* * *

入学式は、学校内にある講堂で行われた。
校長先生の長い話が終わると、新入生は眠たそうに目を擦ったり、中には欠伸する者もいた。校長先生の話が長いのはお決まりのようだ。

(それにしても広いな……)

私は元、お金持ち学校なんだと改めて実感する。
建物自体はそのまま残っているから、どこを見ても他の高校とはスケールが違う。