朝、顔を合わせたら嫁にしてくれ。飯を美味いと褒めても嫁にしてくれ。

 ことあるごとに求婚してくる叶海との日々は、初めこそ困惑したものの、意外と居心地は悪くない。なにより雪嗣自身、前よりも随分と笑うようになった。

 おかげで、氏子である村人たちから「最近の龍神様は親しみやすくなった」と言われる始末だ。雪嗣も神だ。威厳があって然るべきなのに、叶海が絡むと、どうも空気そのものが緩んでしまう。

 叶海自身がいつもニコニコ笑っているから、周りが釣られてしまうからかも知れない。これは由々しき問題ではないだろうか。

「でも――まあ」

 叶海が来る以前よりも、村人たちとよく話すようになった。

 神として見ても、それはいいことかも知れない。

 雪嗣はクツクツと喉の奥で笑うと、フラれてしょぼくれている叶海を思い出した。