だからふたりは、無言で意思疎通できるくらいには親しい。雪嗣が大人の身体へ成長すると、世話人の役目は不要のものとなったが、幼い頃と変わらぬ距離で過ごしている。しかしここ最近、そんなふたりの関係に変化が訪れた。それはもちろん叶海という存在だ。
「なあ、雪嗣。今日は何回求婚された?」
「……聞かないでくれ。数えるのは大分前にやめたんだ」
「ワハハ! マジかよ。やるなあ、叶海」
「笑い事じゃない」
「お姫様も大変だな。求婚を断るのも一苦労だ」
「……だから俺は姫じゃないし、そもそも男だ」
「え、お前ってばヒロイン枠みたいなもんだろ? そのうち、叶海以外にも結婚してくれ~って色んなのが詰めかけてくる奴」
「……勘弁してくれ……」
不満そうに唇を尖らせた雪嗣に、蒼空は楽しげに笑った。
「嫁にしてやればいいだろ。別に、誰かに禁止されているわけじゃない」
「…………」
「あんまりにも毎回綺麗にフラれるもんだから、ちっと可哀想になるぜ」
一気に喋った後、ビールを呷る。仄かな苦味が舌を刺激し、炭酸が弾けながら喉を降りて行く。麦の香りが鼻を通るが、数本飲んだ後の慣れきった嗅覚は鈍くなっており、爽快感はまるでない。
「なあ、雪嗣。今日は何回求婚された?」
「……聞かないでくれ。数えるのは大分前にやめたんだ」
「ワハハ! マジかよ。やるなあ、叶海」
「笑い事じゃない」
「お姫様も大変だな。求婚を断るのも一苦労だ」
「……だから俺は姫じゃないし、そもそも男だ」
「え、お前ってばヒロイン枠みたいなもんだろ? そのうち、叶海以外にも結婚してくれ~って色んなのが詰めかけてくる奴」
「……勘弁してくれ……」
不満そうに唇を尖らせた雪嗣に、蒼空は楽しげに笑った。
「嫁にしてやればいいだろ。別に、誰かに禁止されているわけじゃない」
「…………」
「あんまりにも毎回綺麗にフラれるもんだから、ちっと可哀想になるぜ」
一気に喋った後、ビールを呷る。仄かな苦味が舌を刺激し、炭酸が弾けながら喉を降りて行く。麦の香りが鼻を通るが、数本飲んだ後の慣れきった嗅覚は鈍くなっており、爽快感はまるでない。

