「……寝ちまったか」

 パチパチと焚き火が爆ぜている。陽が落ちてしまうと、この辺りは途端に闇が濃くなる。ポツポツと明かりは見えるけれども、濃厚な闇を払うほどではない。暗闇に沈んだ河川敷には、蕩々と川のせせらぎの音だけが響いている。

 飲み過ぎたのか、はたまた疲れたのか……レジャーシートの上で眠ってしまった叶海に、蒼空は羽織っていたパーカーをかけてやった。

 そしてゴソゴソとポケットを探ると、煙草を取り出す。

 火をつけて紫煙を吐き出すと、暗闇の中にぽつんと赤い光が灯った。

「煙草、いつから始めたんだ?」

 雪嗣が訊ねると、蒼空は少しバツが悪そうに笑った。

「そういや、雪嗣の前では吸ったことなかったか」

 そして蒼空は、煙草は成人する少し前から始めたこと、友人づきあいの中で覚えたことを語った。

「口寂しい時に吸うくらいなんだがな。昨今、一箱の値段も上がってるし、やめた方がいいとは思いつつもズルズル続けてる」

「ふうん、そうか」