ギョッとしている叶海を余所に、素早い動きでクーラーボックスの中身を確認すると、キラリと目を光らせる。

「これじゃ、酒が足りねえな」

「えっ。飲まないんじゃ……」

 困惑している叶海を余所に、蒼空は表情をキリリと引き締めた。そして軽やかにパーカーを羽織ると、叶海たちに背を向けて片手を上げる。

「……しゃあねえな。追加で買い出し行ってくるわ。カブはどっかに預けてくる。帰りは親父に迎えに来て貰う」

「それはつまり」

「俺も飲む! こんだけ美味そうな料理、食わねえのはもったいねえだろ!? だからお前ら! 絶対に俺が戻ってくるまで食い始めるなよ!」

 そして怒濤の勢いで駆け出した。あっという間に小さくなっていく後ろ姿を、呆気に取られて見ていた叶海と雪嗣は、自然と顔を見合わせると同時に噴き出した。

「アハハ……! 私の料理、大勝利って感じ?」

「……クッ……ククク。本当に」

 しばらくお腹を抱えて笑っていた叶海は、綺麗なすみれ色をしている空を眺める。そして、ぽつりとまるで独り言のように言った。

「嬉しいなあ。昔は、三人で山盛りのお菓子を囲んでた。大人になった私たちは、美味しいご飯を食べながらお酒を飲むの。うん、同じ幼馴染みなのに、前に進んでる感じがして、ワクワクするね」

 叶海は蕩けそうなほどに顔を緩めて、雪嗣に笑顔を向ける。

「……そうだな」

 すると、雪嗣はどこか眩しそうに目を細めると、手の中の缶ビールに視線を落とし、しばらくなにかを考え込んでいた。