叶海が取り出したのは、予め調理済み、下拵え済みの品々だ。

 マグロのタルタルはクリームチーズと共に、バゲットを添えて。

 手作りの夏野菜のピクルス。それと、朝採れのとうもろこしは吉田さんから貰ったものだ。チリビーンズソースを乗せて、粉チーズをたっぷりかけて焼く。

 豚のスペアリブは昨日の晩から漬けておいた。ニンニク醤油と蜂蜜の濃厚な手作りのタレが染み込み、飴色になっている。蜂蜜を入れてあるから、焼いても硬くならないのが特徴で、食べ応え充分。

 変わり種にラムチョップも用意してある。根菜たっぷりの酸っぱいタレで食べるラムは、野趣溢れる味がしてお酒に合うことこの上ない。

 それらは叶海が前日から張り切って作った料理だった。仕事の鬱憤もあり、やや力を入れすぎた感もあったが、三人で食べようと丹精込めて仕込んだのだ。

 仕事終わりのお酒と、幼馴染みとの楽しいひととき。さぞ楽しかろうとワクワクしていたせいか、ややおつまみ感が強いラインナップになってしまった。

「……うーん。やっぱりお酒がないと味が濃いかも。なんかごめん」

「…………」

「…………」

 叶海が謝るも、ずらりと並んだ料理に男たちの目は釘付けだ。

「……ああもう。浮かれてて、お酒を飲まないって選択肢をすっかり忘れてた。お握りすらないや。仕方ない。蒼空だけ飲まないなんて可哀想だしね。これは持ち帰ることにして、家から野菜でも持ってこようか。適当に焼きそばでも作っておわ……」

 叶海が苦渋の決断をしようとしたその瞬間、蒼空が叶海の腕を掴んだ。