「バスタオルあるよ。人数分。気が利くね、これはお嫁さんにするべきだね」

「有り難くは思うが、嫁にする理由としては薄弱だと思う」

「嘘。気の利かない嫁より、気が利く嫁の方がいいに決まってるよね……!?」

「残念ながら、そういうレベルの話をしていない」

「お前ら、火起こしできたぞ、当たれ、当たれ~」

 川で目一杯遊んだ三人は、河川敷のバーベキューエリアで食事にすることにした。

 既に空は陽が落ち始め、茜色に徐々に染まりつつある。子ども連れの家族が少なくなり、キャンプがてらやってきたグループがいくつか残っているくらいだ。先ほどまでは打って変わって、河川敷にはどこか大人びた雰囲気が流れていた。

「流石、雪嗣。神様なだけのことはあるな」

 すると、着々とバーベキューの準備を進めながら、蒼空がしみじみと言った。

 バーベキューコンロの上でいい匂いをさせているのは川魚だ。誰かが買ってきたわけでも、釣ってきたわけでもない。笹の葉に包まれて、いつの間にやら叶海たちの荷物の近くに置いてあったのだ。誰かの忘れ物なのではないかとも思ったのだが、どうも違うらしい。

「山に棲まう物の怪たちが捧げてくれたんだ。有り難く頂こう」

「そういうの聞くと、雪嗣って本当に神様なんだって実感するね……」

 感心しながらも、叶海は真っ白な塩を噴きながら、徐々に焼き上がってきた川魚を嬉しげに見つめた。そして、この場に相応しい飲み物の存在に思い至ると、いそいそとクーラーボックスの中を漁った。