雪嗣と蒼空は、勢いよく叶海に不満をぶつけると、吹っ切れたようにはしゃぎだした。お互いに水を掛け合ったり、早々に川から上がろうとした雪嗣を、ふたりがかりで川の中流に投げ込んだり……。子どもたちを上回る三人の騒ぎっぷりに、周囲にいた大人たちは生暖かい視線を向けている。

「アハハハ! ああ、楽しい! あの頃に戻ったみたい……!」

 全身びしょ濡れになり、髪からぽたぽた雫を滴らせて、満面の笑みを浮かべた叶海が言うと、ふたりはどこか緩んだ顔で苦笑した。

「ああ。こういうの久しぶりだなあ。やっぱ楽しいな、ちくしょう!」

「ふたりに関わるといつもこうだ。まったく……」

「なによ、雪嗣は楽しくないの」

「…………悪くはない、が」

 素直じゃない雪嗣に、叶海と蒼空はニヤニヤ笑うとネチっこく絡み出した。

「おうおう、雪嗣も相変わらずだねえ」

「素直になれよ、その方が気持ちよくなれる」

「……誤解を招くような言い方はやめろ……!」

 雪嗣はうんざりした顔をしながらも、ふたりに付き合ってやっている。

 ――ああ。疲労で凝り固まっていた心が解れていくみたい。

 叶海は、賑やかにやり合いながらも、過ぎ去った青春時代を思わせるひとときに、ひとり笑みを浮かべたのだった。