すると、雪嗣と蒼空は顔を見合わせて、深くため息を零した。そして、同時に小さく笑みを零すと、水の中に入って叶海の傍に立った。

「そこまで言うなら仕方ないな」

「まったく、叶海はいつまで経っても叶海だな!」

 そして、それぞれが叶海の手を取った――その瞬間。

 キラリと目を光らせた叶海は、雪嗣と蒼空の手を思い切り引っ張った。

「うわっ」

「……おぉ!?」

 見る間に体勢を崩したふたりは、大きな水しぶきを上げて水の中に倒れ込む。

 全身びしょ濡れになり、川の中で四つん這いになったふたりは、呆然と叶海を見つめた。すると、そんなふたりに叶海はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべる。そして勝ち誇った笑みを浮かべてこう言った。

「フハハ! 引っかかったな野郎ども! 油断するなんてまだまだ甘い!」

 叶海としては、自分ばかりがはしゃいでいるのが気にくわなかった。子どもっぽいという目で見られるのもだ。大人や神様だからといって、水遊びをしてはいけない道理はない。大人ぶって、澄まし顔をしていたふたりの鼻を明かしてやったことに叶海が満足していると、その瞬間、ぞくりと怖気が走った。

 恐る恐る幼馴染みたちに視線を向ける。そして、自分に注がれる物騒な視線に顔を引き攣らせると、こてりと首を傾げて戯けた。

「てへっ」

「てへっ……じゃねえ! ああ、びしょ濡れじゃねえか……!」

「おま……お前! 俺は水着じゃないんだぞ……!」

「なんですって雪嗣のパンツがピンチ!」

「パンツにすぐ食いつくな、馬鹿!」