そんなふたりをちろりと横目で見た叶海は、ヨヨヨと泣き崩れて言った。

「傷心なの。もうこうなったら、ふたりに目一杯遊んで貰って癒やされるか、雪嗣にお嫁さんにして貰うしか……」

「よしわかった、遊ぼう」

「ワハハハハ! 切り替え早すぎねえ? 雪嗣」

 あれほど渋っていた癖に、途端に立ち上がった雪嗣に蒼空は大笑いしている。叶海は内心ガッカリしつつも、清らかな川の流れを眺めながら呟いた。

「まあ、冗談はともかく。こうして、幼馴染み三人が久しぶりに揃ったんだからさ。昔みたいに遊べたらって思ったんだよね」

 両手で川の水を掬う。ここも、雪嗣や蒼空と一緒に遊んだ思い出の場所だ。当時のことを思い出すと、自然と優しい気持ちになるのはどうしてだろう。

 ――やっぱり、私にとっての原風景は龍沖村。ここで私の人生が始まって、そしてこの村にはキラキラした宝物みたいな思い出が散りばめられている。

 でもそれは、過去のことでしかない。

 新しい思い出だって欲しい、叶海はそう考えていた。

「昔、話したことあったでしょ。大人じゃなきゃできないことをしたいって。一生懸命流れ星に願ったけど、ずっと一緒にいるのは無理だった。あの頃の私は子どもで、願いを叶えるにはいろんなことに無力過ぎたんだよね。でも、今は違う」

 叶海はふたりを見上げると、へらりとどこか気の抜けた笑みを浮かべる。

「大人になってもまた三人でいられるの、すんごく嬉しいんだ。だから、遊ぼう」

 そして二人に向かって両手を伸ばした。