「……流れ星!」

 叶海はパッと顔を輝かせた。胸の前で手を組み合わせて、懸命に願い事を思い浮かべる。はあ、と熱い息と共に目を開けると、流れ星は跡形もなく消え去っていた。

「蒼空、見た? 今の!」

「見た見た。俺も願い事したぜ!」

「よかったな、ふたりとも」

 穏やかに言った雪嗣に、蒼空と叶海は大きく頷いた。

「俺、将来のことをお願いした! 可愛い嫁さんに、安定した収入!」

「……意外と堅実だよねえ、蒼空って」

「当たり前だろ? 今は不景気だからって、父ちゃんいつも言ってるからな!」

「へえ、可愛いお嫁さんかあ。誰か候補はいるの?」

 叶海が興味本位で訊ねると、蒼空はすいと視線を逸らした。どこか言いにくそうに、しどろもどろになりながら答える。

「さ、さあな? わかんねえ」

「アレでしょ、お盆に遊びに来る都会の子でしょ~」

「ど、どうだろうな!? 女はみんな可愛いからな!」

 すると蒼空は、まるで誤魔化すみたいに素っ頓狂な声を上げた。

「蒼空らしいね」

 叶海の言葉に、あからさまに仏頂面になった蒼空は「お前は?」とぶっきらぼうに問う。叶海は黙ったまま星空を見上げて、両脇に寝転がったふたりの手を握った。

「おっ……おまっ……」

「叶海?」

 怪訝そうな声を上げたふたりに、叶海はクスクスと小さく笑うと、満天の星空から視線を動かさないまま話し始めた。

「私は……三人で、来年も再来年も、ずっとずっと流星を見られますようにってお願いしたの。こうやって並んで、いっぱい笑って。大人になったら、もっといろんなことをしたいな。子どもにはできない楽しいことをたくさん!」