ひとしきり笑った後、叶海は目尻に浮かんだ涙を拭って雪嗣へ言った。

「ああ、お腹痛い。本当に雪嗣はいろんなことを知ってるね」

 叶海がそう言うと、雪嗣は星空へ視線を向けて、しみじみと呟いた。

「俺は時間だけはあるからな」

「うん?」

「なんでもない。それよりもほら、あれ――」

 叶海は、雪嗣が指さした先に目を向けた。しかし、美しい星空が広がるばかりで、なにも変わりはない。思わず叶海が首を傾げると、雪嗣は悪戯っぽく微笑んで言った。

「一個目」

「…………!」

 サッと青ざめた叶海は、勢いよく寝転ぶ。すると慌てたように蒼空も横になった。そして、ふたりして目をギラつかせて夜空を眺める。けれど、こういう時に限って星は流れないものだ。

「流れ星ィ……」

 ふたりが落胆していると、雪嗣はまた声を殺して笑った。

「もう! それで、雪嗣はなにをお願いしたの」

 半ば自棄になった叶海が雪嗣に尋ねると、彼は少し驚いたように目を瞬かせた。

 そしてどこか遠くを見るような目をして、ぽつんと言った。

「……昔、再会を約束した人がいる。その人が早く来るように」

 雪嗣はそれだけ言うと黙り込んだ。

 ――誰だろう? 村の人だろうか。それとも外の人?

 気になった叶海は、雪嗣に尋ねてみようと口を開きかけて――けれど、蒼空に腕を掴まれて止めた。蒼空の突然の行動に、顔を顰めた叶海は文句を言おうしたが、いつもは能天気な彼が、生真面目な顔をして首を振るものだから渋々口を噤む。

 疑問が解消できなくてモヤモヤする。けれど、叶海のその感情は一瞬で消え去ってしまった。何故ならば、視界の隅に天翔る燐光を見つけてしまったからだ。